患者の一生を大事にすべし
終末期の患者に温かい心医療を
 厚生労働省は先日、 回復見込みのない末期状態の患者に対する 「終末期医療」 の指針を示した。 今日までは、 患者の尊厳などで延命治療の中止など、 末期がんで余命6カ月 (終末期) と診断された患者に対する医療ルールがなかった。 だが、 厚労省が示したのは、 積極的な延命治療を中心とするものではなく、 患者の人格や家族の意思を尊重し、 肉体的な痛みや死に対する恐怖心を緩和するなど、 残された人生のQOL (生活の質) を高めることを目指したもので、 患者だけではなく、 家族への支援も重視している。

 医療機関では近年、 延命治療が施された結果、 死に対する考えがあいまいになり、 「植物人間」 などの脳死・臓器移植が問題視されている。 中でも 「安楽死」 問題が、 社会の注目を集め、 担当医師が告訴される事件が多発している。

 今から16年前、 伊勢原市 (神奈川県) の東海大医学部付属病院で、 激痛に苦しむ末期ガン患者の男性 (当時58歳) に塩化カリウムの原液を静脈注射して死亡させ、 殺人罪として起訴された。 この事件は、 患者の家族の執拗 (しつよう) な懇請により、 徳永医師が看護師の制止をかわし、 「安楽死」 させたという事件である。 翌年、 日本医師会は 「末期医療に臨む医師のあり方」 について検討。 その見解は、 回復の見込みがない患者の延命治療を本人の希望による 「尊厳死」 は認めるが、 薬物などで 「安楽死」 は原則的に認めないとした。 「安楽死」 とは、 ギリシャ語で 「きれいで楽な死」 といった言葉で、 世界中の患者の願いといえる。

 日本では、 キリスト系の病院では患者中心の医療を施しているところもある。 日本全国に約9000余りの病院があるが、 末期がん患者の心のケアーを施している病院は極めて少ない。

 有名な聖路加国際病院 (東京都) の日野原名誉理事長は、 末期がん患者には 「人生に思い残すこと」 がないように心のケアーしていると話す。 子や孫に、 あるいは社会に伝え残したいことが多いはず。 日野原名誉理事長は、 「絵を描きたい患者」 にはその環境整備を、 「音楽が好きな患者」 にはその環境を整備するという。 淀川キリスト教病院 (大阪市) は全人医療を採り入れている。 全人医療とは 「『体、 心と魂が一体である人間 (全人)』 として、 キリストの愛をもって仕える医療」 だ。